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越川というレスラーは、普段の派手な言動、挑発、試合中の反則技に惑わされずに、その試合を観れば、恐ろしく地味で堅実なレスラーだという事が分かる。 越川は、ひたすらグラウンドとサブミッションに徹する。 「あの技」を除けば、ノド輪裏投げ以外、目立った立ち技は無い。 もちろん、急所を打ち、眼を突き、咽を叩くけれど、それは、あくまで相手を撹乱し、その攻撃を止めるためでしかない。 サイズとパワーに劣る越川は、研究熱心であると共に、実は秘かに練習熱心でもある。 グラウンドは、練習で、いくらでも上手く、強くなれる。 仲間内ですらほとんど気付かれていないけれど、越川のレスリングの上手さは所属団体でも一、二を争う。 ...って、ゆってるそばから、何すっかな、お前! あたしね、レスリングは得意だけど、もっと得意なものがあんのよ。 何? プ・ロ・レ・ス ゆってろ! これが、こいつのプロレスです。 嗚呼、フェイクの越川、外道のお姫様。
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「くッ…っう…」 滝沢は股間を押さえて蹲った。 ダメージ自体、大した事はない。 が、同僚の前で、『急所攻撃を喰らう』という失態を見せつけられた事が、滝沢の癇に障った。 (あんたがソノ気なら、わたしも…遠慮しないわ。) レフェリーから注意を受けた越川が、余裕の足取りで近付いてくる。 (…その『ぺこちゃん』顔、思いっきり踏みにじってやるッ!。) 「ほらぁ、さっさと立ちなさいよ。」 滝沢の髪を掴んで引き起こし、次の技を仕掛けようとする越川。 急所攻撃が効いていると確信している、その表情には小憎らしいものがあった。 ずるずると越川に抱き付く様な形で立ち上らされていく滝沢。 誰もが、越川の攻勢が続くと思われた、その時、 ド…ムッ! 鈍い…なにか柔らかいものに、固いものが喰い込む様な音がリング上に響いた。 と同時に、リング上の2人の動きが急に止まった。 攻めている筈の越川が、驚いた様な表情で視線を下の方へ移していく。 そこには… 油断していた越川の無防備なお腹に、深々とめり込んでいる滝沢の正拳があった。 「く…はっ…」 ボディに受けた衝撃によろけ、越川から吐息の様な苦鳴が漏れた。 「わたしを…なめるなぁっ!」 そう叫ぶと、滝沢は思いきり地を蹴った…。 |
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「ふふん・・」 背を向けたままうずくまり、荒く息をはく滝沢の姿に越川は満足そうに笑みを浮かべる。 「もう少しお嬢ちゃんに色々教えてあげようかな」 余裕たっぷりにコーナーを降りようとしたその時、滝沢が突然立ち上がり、後ろ手に越川の頭を捕らえ、サードロープを蹴って宙に舞った。 酷く強引なエースクラッシャーだ。 「なっ!?」 コーナーから引き摺り下ろされる形でマットに落ちる越川。 「もう少し侮ってくれるか、大人しく技を受けててくれれば良かったんだけどね!」 そして、強引なのは百も承知していた滝沢の膝蹴りが越川をコーナーに串刺しにする。 「うぐっ・・うっ・・」 「じっくりやってるとどうもアンタのペースになっちゃいそうだし、ここは一気に行かせてもらうよ!」 動きの止まった越川の髪を掴んでリング中央に投げ転がし、チョーク気味のスイングスリーパーで振り回す。 「く・・かはっ・・」 「・・そろそろかな」 20回転程振り回し、回転の遠心力で越川の体を肩に乗せ、フィニッシュに多用している変形バーニング・ハンマー「レスト・イン・ピース」で脳天から叩きつけ、すかさずマヒストラルを仕掛けてフォールを狙う。 はたして、3カウント奪取なるか? |
