準決勝 第1試合 安藤美鳥VS久藤 円
両者入場!
いざ準決勝
どんな相手でも恐れずぶつかっていくのみ!
『バックギアの壊れた軽トラック』
久藤円、いざ吶喊!!
「みどり」は美しい鳥になれるのか
久藤の入場に続き、安藤もリングイン!
初戦を勝利した自信からか、
その顔には笑みを浮かべていた。
scene #1
いよいよ準決勝第一試合のゴングが鳴らされた。
先手を取ったのは久藤。得意の高速タックルで安藤を捕らえると、
いきなりのハイアングル・バックドロップを炸裂させ、ダウンを奪う。
開始早々の大技に、客席にもざわめきが走る。
しかし、何故か久藤は追撃をかけず、
自コーナーで安藤が起き上がるのを待っている。
セコンドの巴は相変わらず何も言わない。
「っく・・ぅ・・」
一方、不意を突かれた形の安藤だったが、
かろうじて受身を取り、大ダメージは受けていない。
KOカウントをとられまいと、すぐさま立ち上がろうとする。
「貰ったぁっ!」
しかし、そこへ安藤のお株を奪うシャイニング・ウィザード!
「っ!!?」
側頭部への一撃を受け、場外へ転落する安藤。
「よーっし!ガンガンいっくぞーっ!!」
先制攻撃を狙い通りに成功させ、久藤は高々と右手を突き上げた。
scene #2
久藤の猛攻に押され気味の安藤だったが、一瞬の隙を見つけると、
「ちょいやぁ〜!」
妙な掛け声で久藤を丸め込む。
「ワン・・ツゥー・・ス・」
一条レフェリーの手が止まる。寸前の所で肩が上がっていた。
「えぇ〜なんでぇ?、スリィ入ってましたよぉ・・・ブゥー!」
安藤が詰め寄るが、一条は聞き入れない。
その横で久藤は安藤の早業に目をしばたたいていた。
scene #3
序盤、ペースを握りかけた久藤だったが、
今トーナメント最軽量・安藤の
驚異的なスピードの前に、撹乱されてしまっていた。
タッ…ダン、タッ…ダンッ!
瞬発力を誇る久藤すらをも上回るスピードで、
美鳥・安藤のドロップキックが立て続けに決まる。
(こ…このォッ!)
しかも、立ち上がるタイミングに合わせて放たれる安藤のドロップキック。
何度も何度もマットに這いつくばされながら、久藤は唇を噛んだ。
(なんてスピードなの!…体勢を全然整えられないッ。)
ペースを掴めない焦りに、更に同じ事を繰り返す…
「まどかッ!」
その久藤の耳に、滝沢の檄が届いた。
「焦ってるんじゃないわよ、バカ!あんた、私の『ライバル』なのよ!」
茜のその一言で、円の頭に昇っていた血が一気に冷めた。
(そ…っか、ペースを無理に掴もうとするんじゃなくて…)
(自分のペースに相手を引き込む…そうだったね、茜。)
吶喊娘・久藤 円。果たして、再びペースを握る事が出来るか?…
scene #4
何のダメージも無く
何のプレッシャーも無く
何のストレスも無いのならば
恐らく、誰でもが飛べる。
しかし、それを「飛べるレスラー」とは言わない。
落ちて、また飛ぶ。
撃たれて、なお飛ぶ。
安藤を観ていると、ジャンプ力やスピード
ただ、それだけでは、まだ人は飛べない。
まだ足りないものがあるのだと思えてくる。
恐れを知らぬわけではない。
痛みを感じぬわけでもない。
むしろ、安藤こそ誰よりもそれを知っている。
恐れに震える心と、痛みに軋む身体。
しかし、それが力に変わる。
それが翼に変わる。
恐れと痛みを翼に変えて、美鳥が飛ぶ!
scene #5
試合は拮抗していた。
久藤の打撃も安藤の飛び技も、相手をたおすのに至らない。
キッカケだ、キッカケが欲しい。
両者とも同じ考えだ。
止まった流れを引き寄せるキッカケが欲しい。
先に動いたのは安藤だ。
久藤のアゴを肩でロックすると、
「よっ、はっ、それっ」
リズムよくコーナーを懸け上がり、
「ちょいサァー!」
そのまま後方に1回転、久藤の後頭部をマットに叩きつけた!
scene #6
後頭部を強打し、たまらずダウンする久藤。
「いっくぞーっ!」
すかさず安藤は追撃の月面水爆を決め、フォールに入る。
「ま・・まだまだっ!」
何とかカウント2ではねのけ、
久藤はふらつきながらも立ち上がるが、
(どうしよう・・決められない・・どうしよう・・)
押し切れない展開に久藤の思考は迷うばかり。
(・・・あーっ、もうどうでもいい!何でもいいから倒す!)
そして出た結論はいつも通りの勢い任せだった。
「うりゃああぁっ!」
周りから見ればヤケクソのようにしか見えない勢いで、
打撃を繰り出し、安藤を押していく。
「ちょ、こ、こ、このっ・・・・!?」
その勢いとスピードにたまらず下がる安藤
「せいっ!」
そこへ唸りをあげる久藤の右脚。
(やばっ!?)
反射的に安藤は左側をガードする。
しかしその右脚は急激に角度を変え、
急降下し、マットを打ち鳴らした。
「なっ!?」
「本命は・・・こっち!」
そして鞭のようにしなやかに伸びた左脚が、
安藤の首を絡め取る。
「くふっ・・・」
がらあきの右にハイキックをまともに受け、
崩れる安藤。
(チャンス!)
ここで久藤は勝負を決めるべく動いた。
「こ・・のぉぉぉぉぉっ!!」
「!?」
切り札の一つ、
すくい上げ捻り旋回式バックドロップ。
安藤は危険な角度でマットへと叩きつけられた。
scene #7
鈍い音を立ててマットへと叩きつけられた安藤。
これで決まりか、と誰もが思った一撃だったが、
これを安藤はカウント2で跳ね除けた
(そ、そんなっ・・・)
完璧な手応えの一撃を返され、久藤の顔に更なる焦りの色が浮かぶ。
「くっ・・は・・ぁっ・・・」
しかし、立ち上がった安藤も視点は定まらず、足元もふらついていた。
だが、焦る久藤にはそれすら見えていない。
「円!なにしてんの!ぼんやりするなっ!!」
それを一喝したのはセコンドの滝沢だった。
(っ!?・・そ、そうだっ、このまま押し切らなきゃ!)
「はぁぁっ・・・せりゃあああっ!!」
滝沢の渇を受け、久藤の右足が、「円剣斧」が唸りを上げて棒立ちの安藤の首を刈飛ばした。
「フォールが駄目ならっ!!」
その勢いのまま瞬く間に蠍固めの体勢に入り、リング中央で一気に捻り上げる。
「これでどうだあっ!!」
「ぐぅ・・くああぁぁぁっ・・・」
か細い悲鳴を上げ、必死にロープへと手を伸ばす安藤。
しかし、そうはさせじと久藤は胸を押しつぶすように腰をずらし、さらにエグい角度で攻め立てる。
「あ・・うぁぁぁっ・・・」
消えいるような悲鳴に、思わずレフェリーの一条が安藤の顔を覗き込む。
「く・・ぁ・・・」
定まらない視点が一条の姿を捉えたその時、安藤は無念のタップをマットに刻んだ。
「まったく、世話が焼ける・・」
久藤の勝利に安堵し、そして決勝に残れなかった自分に滝沢は唇を噛んだ。
●安藤 美鳥 (25分39秒 蠍固め) 久藤 円○
美鳥、墜ちる...
試合終了後、しばらくしても安藤は立てないでいた。
完璧にキマった蠍固めのダメージが、相当なモノだったようだ。
みかねた後輩の池田がリングに入ろうとすると、安藤の前に手が差し出された。
勝者の久藤だ。お互い見詰め合うと何故か二人とも笑いだす。
再戦を約束すると、久藤と池田に抱えられて安藤はリングを後にした。
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